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KANEKO Chalin 音楽好きのつぶやき

音楽好きのつぶやきVol.18 If I Should Fall From Grace With God - ザ・ポーグス

KANEKO Chalin
KANEKO Chalin
My Favorite CD

 「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」を見た。いやあ、ヤバい。最近の日本語では“ヤバい”はほぼ“Very”の意味で使われるようになっているが、Shane MacGowanはもともとの意味のほうでヤバい。彼のように生きたいかと言えば、答えはNOだ。かっこいいけど、いや、無理だ。多分、もう映画館での上映は終わってしまっていると思うので、まだの方は配信を待って、ぜひ、見てみてください。5歳から飲酒、高校で薬物中毒、歯を失い、今は車いす。最近、断酒したという噂をちょっと聞いたが、映画の中でずっと飲んでいた。何より一番面白かったのは、小さかった頃のアイルランドの生活が生き生きと描かれていること。Shane にとってのアイルランドの意味がストレートに伝わってきた。The Poguesは私の音楽史上3本の指に入るくらいの衝撃度合いの音楽だ。アイルランドの豊かなメロディとリズムをパンクしてしまうというのはイノベーションそのものだ。あんまりPoguesの歌詞を気にして聞いていなかったのだが、映画で歌詞を見てみたら、歌詞もヤバい。文学×パンクという発明もやはりイノベーションだ。という意味で、飲んだくれだけどShaneはイノベーターだ。しかも、私が一番好きなイノベーションである、「伝統の革新」を酔いどれた状態でやってのけている。一言、かっこいい!

 今回は、伝統を革新したと僕には思える音楽を紹介したい。とりあえず、まずはPoguesから。

「If I Should Fall From Grace With God」ザ・ポーグス

 Shaneは特別歌がうまいとは思えないのですが、この曲はShaneの声じゃないとだめだなあ。

 次に紹介するのは、ボサノバ。サンバのあの複雑なリズムをギターの弾き語りで再現しちゃおうという発想がすでに常人が考えることではない。かなり長いこと家にこもって、エコーが効くからという理由でお風呂場でひたすらギターを弾いて発明したと聞いたことがある。一度だけライブを見た時、相当待たされてハラハラしたけど、舞台上に現れて、ギターを一音奏でた瞬間、数千人入るホールが完全にJoão Gilbertoに支配されたのを鮮明に覚えている。

「Chega de Saudade」ジョアン・ジルベルト

 次は、レゲエから。レゲエの成立について詳しいわけではないのだけれど、Jimmy CliffやFrederick ‘Toots’ Hibbert等がうまくスカのリズムにアメリカのリズム・アンド・ブルーズ、ソウル音楽をかけあわせることによって生まれてきたのではないかと個人的には思っている。そこから、どんどんスピード落とすことでグルーヴを出していったのがBob Marley達なんだと思うが、今回は、スカ×ソウルということで、この曲を。

「Pressure Drop」トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ

 そして、キングの登場だ。映画「Elvis」の話しは次の機会に譲るとして、映画の中でパーカー大佐がElvisのレコードを聴いて、黒人と間違えるシーンがある。貧しい生い立ちだったElvisにとって黒人音楽は当たり前だったのかもしれないけど、分断されていた(今もかもしれないが)頃のアメリカにとって、黒人音楽×白人音楽というのは今では想像できないくらい衝撃だったのだろうと思う。時代は50年代前半だから、すでにJazzでは白人と黒人が一緒に演奏して、アメリカ中で聞かれていたと思うのだが、やはり、当時のJazzはヤバい音楽だったのだろうなと想像できる。いや、Elvisの話しだった。個人的にはカムバック後の60年代後半から70年代前半のElvisが大好きなのだが、そのあたりはまた別の機会にということで、今回は、パーカー大佐を間違えさせたこの曲を。

「That‘s Alright」エルビス・プレスリー

 次は、ダンスホールで、ビッグバンドがスウィングして、人々を躍らすための音楽だったジャズを、座って聞く音楽へと変化させたイノベーターを。僕はLouisこそジャズと思っているような人間ではあるが、もちろん、Be-bop以降のモダンジャズも大好きだ。初めて聞いたジャズはCharlie Parkerだった。ブルーズやスタンダードのコード進行に載せて、自分を極限まで追い込みながら、アドリブを昇華させていく、40年代後半のCharlie Parkerはまさにイノベーターだった。曲は途中で終わってしまうけど、このブレイクは極限だ。

「The Famous Alto Break」チャーリー・パーカー

 さて、がらりと変わって、パンクに戻ろう。個人的にアメリカのロック・アンド・ロールの多くはかなりフィル・スペクターに影響を受けていると感じる。そのあたりは別の機会にまた書かせてもらいたいと思うが、Ramonesはアメリカの黄金時代の音楽を、ものすごくシンプルなフレームで高速で演奏するということをやっていたのだと僕には思える。これなら、テレビの中のアイドルやテクニカルなロックバンドじゃなくたってできるから、俺らもやる!って感じ。誰も口ずさめちゃうし、ジャンプしたくなる音楽の出来上がり。

「Blitzkrieg Bop」ラモーンズ

 最後にソウルの創始者の一人を。ソウルは別に一人のミュージシャンが創り上げたわけではないけど、やはりキングはこの人だろう。彼の伝記映画もありましたねえ。すごくよかった。ソウルが生まれる瞬間が見事に描かれていた記憶がある。今回の流れで言えば、ゴスペルとブルーズをごちゃ混ぜにしちゃったということだろう。ギターの弾き語り、もしくは、小さなバンドで演奏されていたブルーズに、大勢が歌うゴスペルのフォーマットを持ち込んだ。そういう意味では、JoãoやCharlie Parkerの逆かもしれない。当時のゴスペル界隈の人が怒るのも当たり前だ。神の音楽のフォーマットで悪魔の音楽を奏でてたんだから。そういえば、サム・クックもゴスペルのフォーマットを白人のポップソングと掛け合わせたともいえるから、きっと、ゴスペル界隈の人には怒られたんだろうなあと思う。

「What'd I Say」レイ・チャールズ

 最後にいつも通り、私の曲を。Shaneの映画を見て、あまりのヤバさとカッコよさにうちのめされて、その日のうちに書いた曲です。

KANEKO Chalin
KANEKO Chalin
KANEKOの本日の一曲

Song for Punks  作詞作曲:金子茶琳

“So many times, you are too drunk”
“I just wanna give you fun“
“So many times, you made my parties bang!”
“I just wanna give you fun“
“So many times, you use dirty slungs”
“I just wanna give you fun“

“You shouted my name away from miles”
I just wanna make you smile“
“You don’t know why they don't like your hair style“
“I just wanna make you smile”
“Don‘t you know that you are not cool like Miles”
“I just wanna make you smile“

You don't want to be told what to do like a fool
the drummer’s counts and the super cool chords are running to you
and shooting through

Song for punks,
me and you,
and girls and dudes
We are lucky to have been born
Song for punks
We have blues
about love or truth
we don’t have time to moan
I don’t wanna break nothing else
I sometimes wanna break myself
for all punk dudes
with all punk dudes
We are all crude
but it is that useless fool is cool

“Ⅰnever mean to hurt any kinds”
“You glare at all cat you find“
“I never mean to hurt any kinds”
“You try to over the dead line“
“I never mean to hurt any kinds”
“You sharpen your knife to shine“

All rule you'll follow is the love rule,
the drummer’s counts and the super cool chords are running to you
and shooting through

パンクスに捧ぐ

「もう何度酔っ払いすぎた?」
「君に楽しんでもらいたいだけなんだ」
「何度もパーティーを台無しにしたよね」
「君に楽しんでもらいたいだけなんだ」
「何度も汚いスラングを使うよね」
「君に楽しんでもらいたいだけなんだ」

「私の名を遠くから叫ぶなんて」
「君を笑顔にしたいだけなんだ」
「なんでヘアスタイルが嫌われるのかわからない?」
「君を笑顔にしたいだけなんだ」
「マイルスのようにかっこよくないことはわかってるよね」
「君を笑顔にしたいだけなんだ」

あなたはバカ扱いされて指示されたくないんだよね
ドラムのカウントと超クールなコードがあなたのほうへ駆け
あなたを撃ち抜く

パンクスに捧ぐ歌
私とあなたと
悪い仲間ため
生まれこられてラッキー
パンクスに捧ぐ歌
愛か真実についての
ブルーズを持っている
文句を言ってる暇はない
何も壊したくはない
たまに壊われたい
すべてのパンク野郎のために
すべてのパンク野郎とともに
みんな暴れん坊だけど
役に立たない愚か者こそかっこいい

「どんなものも傷つけるつもりはないんだよ」
「あなたは猫を見つけるといつも睨みつける」
「どんなものも傷つけるつもりはないんだよ」
「あなたはデッドラインを越えようとする」
「どんなものも傷つけるつもりはないんだよ」
「あなたは光らすためにナイフを研ぎ澄ます」

あなたが従うのは愛のルールだけ
ドラムのカウントと超クールなコードがあなたのほうへ駆け
あなたを撃ち抜く

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